香川栄養学園の歩み

1933年、女子栄養大学の前身である家庭食養研究会が発足しました。創立者の香川昇三と綾は、共に医師であり、「医師の使命は病人を治す前に病人をださないこと」という二人の恩師である島薗順次郎教授（当時：東京帝国大学医学部）の志に共感し、病気を予防する栄養学に人生をかけて取り組む決意をしました。自宅を改造して作った教室でわずか20名人ほどの生徒でスタートしましたが、少しずつ会員も増え、受講生に配布する講義テキストを雑誌として発刊することとなり、1935年に月刊誌「栄養と料理」が創刊されました。

1937年「家庭食養研究会」は「栄養と料理学園」と名称を改め、全国から学生の募集を開始しました。1940年に「女子栄養学園」に改称し、1942年には駒込に校舎を新築しました。一方で、日本は戦争への道を突き進み、1945年空襲により駒込校舎は全焼し、学園は群馬に疎開しました。昇三は過労から脳溢血で倒れ、51歳の生涯を閉じました。戦争末期の大変厳しい食料事情の中でも、少しでも栄養改善するべく全国を行脚し、人々の健康のために力を尽くした生涯でした。

亡くなった昇三との「生き残った者が二人の意志として栄養学の仕事を続けよう」という約束を胸に、綾は、1950年に駒込校舎を再建し、「女子栄養短期大学」が開設しました。学園創設からの綾の口癖だった「いつかは栄養学の大学をつくる」という目標が叶い、1961年には念願だった４年制の「女子栄養大学」が開設しました。1965年には栄養学部の認可を受け、日本で初めての栄養学部が誕生しました。

このほか、1959年には東京で最初の調理師学校として「香川調理師学校」を設立し、1964年にはいつでもどこでも誰でも学べるように「社会通信教育（栄養と料理講座）」を開講しました。1935年に創刊した月刊誌「栄養と料理」は、現在も刊行され、多くの方々に愛読いただいています。誰もが栄養学を学びやすい環境を整えるために、栄養学の知識や実践を広める教育にも力を尽くしてきました。
さらに、1969年には大学院（修士課程）を設立。その認可の知らせが舞い込んだのは、綾の70歳の誕生日を祝う席のことでした。1989年、綾90歳の年には、大学院の博士後期課程の設置が認められ、栄養学の知識や実践を深める教育へと深化していきました。1997年、大学院博士後期課程に保健学専攻が設置されるのを見届けて、綾は98歳の生涯を終えました。
こうして本学園は、専門学校から大学院までを有する食と健康の総合学園として、発展してきました。